ギターのエフェクターにディストーションというものがあります。音を歪ませるエフェクターです。楽器を弾いてなくてもご存じかもしれません。
昔々ギター用のエフェクターなどというものは存在しませんでした ※1。それにもかかわらずディストーション・サウンドは存在していました。
どうやってギタリスト達がディストーション・サウンドを作っていたのかというと、これもみなさんご存じかもしれませんが、アンプのスピーカー・ユニットが出力に耐えられずに歪むまで、アンプのボリュームを上げてディストーション・サウンドを作っていたわけです。
Rock という音楽の音量がでかいのは、もともとはギターのディストーション・サウンドが欲しかったからです。
私が Live の音量を意識したのは Jeff Beck が Stanley Clarke と来日したときでした。Live は Darkness / Star Cycle で始まったかと記憶しているのですが、背後でビリビリと何かが鳴ってるわけです。
最初は B 席の最後方で聴こえるこのビリビリ音がなんなのかわからなかったのですが、そのうちわかりました。普通ホールには非常口の誘導灯がありますよね。あれがシンセサイザーの音で震えてビリビリと音をだしているわけです。
ホールの備品がビリビリと音をだしていたのですから音量はそれなりにあったはずなのですが、それを轟音とは感じませんでした。Jeff のフレーズも聞き取れますし Stanley のベンベンしたスラッピングも、前の席のおネェちゃんたちの「ベックゥ〜♥」などという黄色い声も聴こえてましたからw ※2
Rainbow のときも PA 真っ正面という大音量絨毯爆撃領域でありながら、全パートの音は普通に聞き取れてました。
ですが結婚前の女房につきあって行った爆風 SLUMP の Live はいろいろ違っていました。
自分の Rock の Live のイメージというと、ステージ上にギター・アンプとベース・アンプが置いてあって、ステージ脇に PA スピーカーが鎮座して、そこからドラムとキーボード、ボーカルの音をだすというセッティングです。ところが爆風 SLUMP の Live のときはまったく違いました。
購入できた座席はホールの中央付近の右端でした。
席がとれたときは、あぁステージからちょっと遠いかな、と思っていたのですが、当日実際に席につくとなぜか目の前に PA が山のように積まれています。おどろいてホールを見渡すとステージ脇だけでなく、数カ所に PA の山がつくられています。
そして轟音とともに Live が始まりました。ええ。轟音です。まともに曲が聞き取れないくらい轟音です。何を演奏しているのかわからないくらい轟音です。
途中でふと気がついたのですが、ギターだけでなく PA から聴こえるサンプラザ中野さんの声までが歪んでいます。このころには PA の性能はすでに向上しており、出力を上げたからといって PA が歪んでしまうというのは考えにくく、電気的に加工しているのでなければ、歪みはコーン…膜が音量に耐えられないことでおきるわけだから……
まさかと思って耳を指で塞いでみましたよ。
とれましたよ。耳を塞ぐとボーカルの歪みがなくなりましたよ。
鼓膜が受け入れることのできる限界を越えた音量のために、鼓膜でディストーション・サウンドが生まれていたわけですね。こんなのもう音楽じゃないw
先日耳栓のことを書きました。そのときいろいろ調べた際にこんなのを発見してしまいました。そっかぁ。今でも Rock 系の Live は人間の聴覚に障害をおよぼすほどの大音量なんですね。
もう意味のない大音量コンテストはやめた方が、誰もが幸せになると思うのですが、そう思うのはマイノリティでしょうか?w
※1 あるいはギタリストによっては、エフェクターがあるにもかかわらず、それを使わないという選択をしている人もいました。
※2 Jeff Beck の Live ではこういう黄色い声があったんですよ。本当に。噂には聞いてはいたのですがw